電気自動車の航続可能距離と実走行距離の真実。EVって長~い下り坂だとの航続距離が長くなるんですよ♪

電気自動車

電気自動車の実際の航続距離が、人によって異なる理由

電気自動車って航続距離が短いイメージがありますよね。その通り、例えば2017年9月にフルモデルチェンジされた新型リーフ、公称の航続距離(JC08モード)は400kmと言っていますが、実際に公道を走れば、およそ220km~240km、よほど丁寧に走って280kmから300kmです。しかし、なぜこの様に航続可能距離に差があるのでしょうか? それは電気自動車は環境によって航続距離が大幅に変わるからです。例えば、極端な話をしましょう。下図をご覧ください。

もし、とても長~い坂道があったとします。その距離が400kmだと仮定します。そこを新型リーフで回生ブレーキを利かせっぱなしで走れば、航続可能距離は400km+400kmで800kmにも伸びます。もちろん現実には、こんな長い坂は存在しません。だから、これは机上の空論です。ただ環境によって航続可能距離は幾らでも変化するという事をご理解頂けると思います。

また、もう一点、運転の仕方によっても激変します。下図をご覧ください。

乱暴な運転の場合

丁寧に運転した場合

急発進は電力を多く消費します。また急停止はイコール回生ブレーキを使用しないという事です。回生ブレーキを使用しなければ、エネルギー(電気)は回復しません。
対して、ゆっくり発進すれば、電力はあまり消費せずに済みます。加えてゆっくり停車すれば、回生ブレーキを使用するので、エネルギー(電気)は回復致します。つまり丁寧に運転すれば、航続距離は劇的に伸びます。これはガソリン車にも同じことが言えますが、電気自動車の場合、とても顕著にその傾向が現れます。以前の測定では、乱暴に運転した場合、電費が4.87km/kWh、丁寧に運転した場合、電費が最高7.73km /kWhとなりました。なお、その際に使用したリーフのバッテリー容量は30kWhなので、航続距離の理論値は、乱暴な運転の場合は 4.87×30=146.1km丁寧な運転の場合は 7.73×30=231.9kmとなりました。驚きですよね(;・∀・)、理論値ではありますが、なんと航続可能距離に85kmもの差が出るのです。

この様に電気自動車の航続可能距離はデリケートで、他にもエアコン使用や、高速道路を走行時などで大きく変わります。その旨、公式マニュアルにも記載されていますのでご興味があれば参照してみて下さい。

i-MiEV取扱説明書より抜粋



出典元:http://www.mitsubishi-motors.co.jp/afterservice/manual/pdf/imiev_manual.pdf?20180423
P8-9「計器・スイッチ」より抜粋

【実験】実際に長い下り坂で試してみる

阿蘇カルデラの地形図
さきほど極端な例で、400kmもの長い下り坂が存在すれば新型リーフの理論航続距離が800kmになる、なんてトンデモナイ話をしましたが、実際にどうなるのでしょう? 僕自身、よく解らなかったので、実際に実験してみる事にしました。九州と言えば、世界一のカルデラを誇る阿蘇山ですよね。「道の駅 阿蘇」から自宅付近の「福岡空港」までドライブしながら計測する事に致しました。

【コース図】

【断面図】(標高が解る様に作成)

どれくらいの坂道か判るよう、国土地理院の地図を使用し「断面図」を作成してみました。

注:あくまで、おおよその概略図です。なお距離が108kmとなっている理由は以下の図をご参照ください。

補足:国土地理院の「標高がわかる地図」にて作成したエビデンス

使用車両

使用車両:いつものミニキャブMiEV君

注:燃費向上のため、細長いiMiEV用タイヤに交換し外形が変わっています。つまり外径、純正542 現在569のの為、トリップメータの読みは569/542 =1.05倍する必要がある点に御注意ください。m(_ _)m (後述:※1

実験結果

まずは実験結果のまとめから説明します。

計測地点

計測結果

補足:「コンピュータが算出する航続可能距離」とは

結論

まず最初に説明する事は、我が家のミニキャブMiEV君は通常、満充電で100kmと少しぐらいの航続距離であるという点です。(先に言った通り状況次第で大幅に変わりますが、仕事で23万キロに渡って乗ってきた相棒Kちゃんの経験からくる感覚は間違いありません)。それが今回、96%の充電で120km走ったというのは驚異的な数字なのです。やはり下り坂の場合、航続可能距離は伸びるという事が証明できました。(本当は、もっと伸びるかと思いましたが、、(;^ω^) 下り全てを回生ブレーキ使用しながら降りると、さすがに後続車がが危ないので、下りでも多少アクセルを踏む必要がありました。。)

ただ他にも、注目すべき点があります。まずは頂上付近(地点C)の値です。平地(地点B)のコンピュータが算出する航続可能距離は妥当ですが、登坂(地点C)のコンピュータが算出する航続可能距離が実走行距離に比べ、著しく減っている点に御注意ください。わずか7kmしか走っていないのに、航続距離は31kmも減ってしまいました。標高差はたった400m程なのに、です。

この理由は、以下の図を見て頂ければ解ると思います。車載コンピュータは急激な登坂が始まる事は解りません。地点Bでは平地を走ったデータを元に、平地を走り続けた場合の航続可能距離を算出しています。ところが地点Cでは登坂を走ったデータを元に、登坂を上り続けた場合の航続可能距離を算出するのです。

次に、地点Eに注目してみましょう。49kmを走ったのにも関わらず航続可能距離は20kmしか減っていません。(むしろ下り坂の状態次第では増える可能性すらあります)。

この理由も、以下の図をご参照下さい。地点Cでは登坂を走ったデータを元に、登坂を上り続けた場合の航続可能距離を算出していましたが、地点Eでは下り坂を走ったデータを元に、下り坂を下がり続けた場合の航続可能距離を算出しているからです。

ここで注意が必要です。地点Eで平地に入りました。この時点でゴールまでの距離は61km、対して航続可能距離は73kmなので、余裕でゴールできそうに思えますよね? でも地点Eは、下り坂を走ったデータを元に算出されているのです。つまり航続可能距離が長めに表示されてしまっているのです。経験則ですが、我が家のミニキャブMiEVはフル充電で100km少々しか走りません。バッテリー残量50%ほどなので、恐らく50km少々しか走らないと推測できます。

しかし、そこは今まで23万キロもミニキャブMiEVで走ってきた相棒Kちゃん、当然上記の様な事は予測してます。そこで丁寧に運転して、なんとか以下の様な結果になりました。

お判り頂けたでしょうか? 電気自動車の航続可能距離は、如何に環境に左右されるかと言う事を。いちど電気自動車に乗った人は解ると思いますが、けっこう、電気自動車にアルアル問題で、航続可能距離がわからず電欠してしまったり、電欠するのが嫌でガソリン車に戻る人も大勢います。この辺り、メーカーも重要性を理解してきていると思います。中には冷暖房の使用状況まで考慮して航続可能距離を算出するナビもあります。今後は標高データを組み込み、坂道の状態も考慮して航続可能距離を算出するナビを開発して欲しいな♪

ちなみに、まだまだ不便が沢山ある電気自動車。でも、だからこそ僕はエンジニア魂をくすぐられます。最近、大手の保守的な社内SEの方々と仕事をする機会が多く、電気自動車に否定的な人を多く見かけます。ですが若い人はベンチャー魂やエンジニア魂を持って、意欲的に、こういう新しく不便な物に飛びついてください! 不便だからこそ、改良するチャンスが沢山あるのですよ♪

おまけ:実験結果のエビデンス

以下はエビデンス(証拠)です。ご興味のある方のみご参照くださいませ。

地点A:出発時のエビデンス


道の駅 阿蘇


充電量:96%


ナビをセット:残走行距離123km


出発時:トリップメーターA:0km


出発時:航続可能距離:130km

※注:宮崎側から阿蘇カルデラを降りてきた為、直近は下り坂。よって航続可能距離が長めに出ている。(普段は満充電で110kmほど)

地点B:カルデラの平地が終わり、登り始める地点

平地はおおよそ、コンピュータが算出する航続可能距離の減り方(130-124=6km)と、実際に走った距離(5.8×1.05(※1)=6.09km)が一致した。


ナビ:残走行距離:117km

登り坂の写真


航続可能距離:124km


トリップメータ読み:5.8km

地点C:頂上付近(カルデラの淵)

登り坂は実際に走った距離(12.1)x1.05(※1)=6.615km)に対して、コンピュータが算出する航続可能距離の減り方(124-93=31km)が凄く大きくなってしまった。なお上った標高は約400mです。

ナビ:残走行距離:110km


航続可能距離:93km


トリップメーター:12.1km

※実走行距離:12.1×1.05(※1)=12.7km

地点D:松原ダム付近(標高:310mほど)

前回の地点C(頂上付近:標高858mほど)では、コンピュータが算出する航続可能距離は93㎞、たいして残走行距離:110km(実走行距離は13kmほど)。つまり最後まで走り切れないハズでした。ですが、この間はずっ~と下り坂。よってコンピュータが算出する航続可能距離がドンドン伸びていきます。結果、松原ダム付近(標高:310mほど)では逆転し航続可能距離は88km、たいして残走行距離は83km(実走行は37.6×1.05(※1)=39.5km)と逆転しました。


ナビ:残走行距離:83km


松原ダム(標高:310mほど)


航続可能距離:88km


トリップメーター読み:37.6km

※実走行距離:37.6×1.05(※1)=39.5km

地点E:大分県日田市付近(ほぼ平地まで降った場所)標高74.6m

阿蘇山の坂も終わり、ほぼ平地まで下ってきた場所です。この間も下りだったのでコンピュータが算出する航続可能距離が73kmに対し、残走行距離は61km(実走行距離は58×1.05(※1)=60.9km)と、最後まで走り切れるとコンピューターは判断していました。ですが、標高74.6m地点の日田から、標高8m前後の福岡空港までの間は小さいながらも、アップダウンの繰り返し、走行距離がドンドン減っていくことが予想できます。(もっと言うと、今までの経験則らフル充電で100kmしか走らない事を知っています。バッテリーは約半分、恐らく55㎞ぐらいしか走らないと、この時点では推測していました。)


ナビ:残走行距離:61km


標高:74.6m


航続可能距離:73km


トリップメーター:58km

※実走行距離:58.0×1.05(※1)=60.9km

地点F:ファミリーマート朝倉甘木菩提寺(平地)標高50m前後

予想通り、ほぼ平地でしたが小さなアップダウンの繰り返し、走行距離がドンドン減ってきました。コンピュータが算出する航続可能距離が28kmに対し、福岡空港までの残走行距離は33km(実走行距離、83.9×1.05(※1)=88km)もあり、またもや逆転しました。このままでは福岡空港まで辿り着けない計算です。ここで私から相棒Kちゃんに運転手を交代。理由は、いつも仕事でミニキャブMiEVを運転している彼女、今までに24万キロも走った実績があり、こういう状況でも目的地までたどり着くため、どう電費を節約しながら走れば良いか、十分に心得ているからです。

ナビ:残走行距離:33km


航続可能距離:28km


トリップメーター:83.9km

※実走行距離:83.9×1.05(※1)=88km

地点G:福岡空港付近(日産プリンス福岡店)

あまりにバッテリー残量が無く、もう少しで電欠(ガソリン車で言う所のガス欠)しそうだったので、福岡空港まで行かずに、その近くの充電スタンドに立ち寄りました。ただし地図の通り、ほぼ福岡空港なのでココをゴールと定めました。


日産プリンス福岡店


ナビ:残走行距離:1.7km


航続可能距離:0km(亀マーク)


トリップメーター:114.2km

※実走行距離:114.2×1.05=120km

充電開始時(ほぼ空の状態)


充電終了時(8.6kWh充電された)

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